島めぐり風だよりvol.15 of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

島めぐり風だより Vol.15 (2012.6.28)

『沖止め』

 沖止めという言葉を知ったのは、天売に来てからだ。行事や事故などで漁船の出漁を一斉に止めることをいう。正月、盆、漁業組合の総代会、そして高校生にもっとも身近な沖止めの行事が、島民大運動会だ。今年は天候にも恵まれ、およそ島民の3分の1が集まり、競技に参加したり孫や子どもを応援した。島には※ちびっ子ランド、小中学校、高校と3つの教育機関があるが、毎年6月春の漁から夏の漁へと移行するこの時期、児童生徒と町内会が紅白に分かれて優勝旗を争いながら親睦を図る。
 私は赴任前、知り合いからこんな話を聞かされた。島民大運動会は、漁師たちが大いに盛り上がる。なかでもぐいっと一杯という競技では、酒をあおり走るというのだ。沖止めは、忙しい漁師たちにとって休日でもあり、応援しながら飲む風習があるのも当然だなと勝手に思った。大切なのは鉢巻きの仕方だとか。手ぬぐいをねじり、ちょいと斜めにするのが漁師らしくて島の人から好まれるのだという。私の頭の中では、お玉にピンポン球をのせ千鳥足で走っているイメージが勝手に拡がった。又聞きの又聞きだったのか、残念ながら今はそういった種目はない。人の話は尾ひれ羽ひれがつくものだ。 
 小学校入学前の子どもたちが、よそ見しながら足もと頼りなくかけっこをする姿や、可愛らしくダンスを踊る姿は、観客の笑顔を誘う。指導をしたのは、本校の卒業生と現役女子高生だ。ちびっ子ランドは、彼女たちの就業先である。自分たちが参加する競技の合間を見て、園児たちへの目配りを忘れない。かけっこのゴールでは、膝をついて屈んで両手を拡げ園児が飛び込んでくるのをとびっきりの笑顔で迎えていた。
 島民大運動会の振替休日は、島の神社の祭典だった。この日も沖止め。本島を開くに当たり文化元年に鎮護の神として奉られたと町史にある。今から2百年以上も前のことである。昭和20年代から30年代にかけて鰊漁で大漁していたころには、島外からやってきたものも含め2千人を越える住民がいた。祭はさぞ賑やかだったことだろう。御輿行列では、猿田彦である天狗や獅子舞が先陣を切り練り歩く。伝統が脈々と受け継がれているのだ。近年御輿の担ぎ手が少なく、教職員や海鳥の研究で夏の間だけ住む大学生が地元の若者と一緒になり盛り上げている。残念ながら今年は※定体連全道大会と重なってしまったが、生徒や引率教員は帰島後すぐに御輿に加わった。島の人が喜んだのはいうまでもない。

※注1:町立保育所として昭和36年に開所した施設が前身。現在ちびっ子ランドと称し、保育運営委員会が中心となり島の園児を保護している。
※注2:定時制通信制体育連盟主催の大会。唯一全国大会につながる定時制や通信制に通う生徒のスポーツ交流の場。

DSC02413.JPG運動会入場行進DSC02684.JPGちびっこの補助をする本校生徒IMG_4490.JPG踊りの指導も本校生徒と卒業生がDSC03711.JPG地域の祭典鳥居をくぐった御輿.jpg鳥居をくぐった神輿

※写真は一部加工を施しています。

オロロン日誌

エゾセンニュウという夏鳥が夕方から夜半にかけて鳴いてます。鳴き声は「じょっぴん掛けたか」と聞こえます。姿は暗くて見つけられません。もともと“潜入”からその名がついたそうです。

※注:「鍵」をあらわす方言です。北海道民なら40代くらいまでは、わかるのではないでしょうか。

民家の庭先にもきれいな花や木があります。テッセン、キショウブ、ジギタリス、ハマナスなど散策のおり眼がとまりました。桜は6月半ばまで咲きました。娘が産まれたら植える桐の木もあります。

「天売島の自然と親しむ会」でフットパスを草刈りしました。淡緑色のアオチドリが沿道で見頃です。

テッセン.jpgテッセンキショウブ.jpgキショウブジギタリス.jpg「魔女の指抜き」ジギタリスハマナス.jpgハマナス桐の木と花.jpg桐の木と花6月半ばまで咲く桜.JPG6月半ばまで咲く桜