島めぐり風だよりvol.7 of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

島めぐり風だより Vol.7 (2011.10.5)

『実りの秋』

 80年代校内暴力の嵐が、全国各地で吹き荒れた。北海道でも校内をバイクで走り回ったり、消火器が廊下にばらまかれたりする学校があった。「落ち着いた授業などできず、板書しようと生徒に背を向けると、弁当箱が飛んできて黒板にご飯で貼りつき、ゆっくり落ちてくるんです」と知り合いの教師から聞いた。各校は学校を建て直すために会議を重ねた。ひとつの方策として道北の中学校で導入され、あり余る生徒のエネルギーを吸収し見事学校を甦らせるきっかけとなったのが、よさこいソーランである。後にドラマ3年B組金八先生で取り上げられたことでも知られる。
 あれから4半世紀。本校の学校祭でおおとりは、毎年生徒と教職員合同で披露するよさこいソーラン。生徒会長の「さあ行くぞー」に気合で応え、来客の前に立ち大音響の中で踊る。膝を深く折ったり、前かがみで中腰になるのは本当にキツイ。最後に決めのポーズを決めたとき体育館は拍手につつまれ、生徒も満足感で一杯だった。完全燃焼の瞬間だ。

 今年の学校祭テーマは「挑戦」。生徒数が昨年の学校祭と比較し3分の1、教員も定員減の中、どこまで昨年と同様に学校祭ができるかやってみる。それがこのテーマを選んだ理由だと聞く。日頃より自分達を支えてくれお世話になった方たちに感謝をし、楽しんでもらいたい一心で学校祭に取り組んだ。時間をかけ生徒と向き合い計画を練り、準備を指導してきた生徒会担当の先生も不安であったろう。果たして生徒達は見事にやり遂げてくれた。来客を体育館出口で見送り、胴上げのあと円陣を組み生徒が感想をひと言づつ述べる。涙ながら語る心に響く言葉に、教師で良かったなと先生方もこみあげるものがあった。

 初日はバザー。前日から天気が悪く、外に張ったテントでの焼き物ができるのだろうかと心配だった。長く勤めている事務生のNさんが、「私が来てから学校祭で雨が降ったことは一度もありません」と話していたが内心ヒヤヒヤ。今年の行事は中止にこそならないものの、ことごとく雨にたたられている。ここで降られたら、それこそ何をいわれるやらと思っていた。どっこい朝までの悪天候が、嘘のようにピンポイントで晴れ胸をなで下ろす。テントは、保護者や同窓生、振興会の方々が運営してくれる。色とりどりの裸電球の下、いい匂いが鼻をくすぐる。ホタテや焼き鳥が飛ぶように売れていく。一部履修科目生の皆さんには、フリーマーケットをお手伝いいただく。
 2日目は芸能発表。体育館には百名近く入った。全島民の4分の1だから驚く。芸達者な方々がステージを彩る。中高生のバンドやダンス、小学生と園児姉弟のピンクレディー、ママさんによる器楽演奏など。まさに島の文化祭だ。もちろん高校生の出し物も満載だ。映像劇は生徒が主演で、スリラー仕立ての秀作。伝統の継承と創造をテーマに和太鼓も披露した。今年は島外から富良野いやさか太鼓保存会の篠嶋さんを迎え指導を受け、その後時間をかけ練習を重ねた。腹の底に響く音は迫力十分で、事後アンケートでも一番支持を集めた。

 生徒が地域を盛り上げ、若者文化を発信していき地域社会に刺激を与える創造的行事。それこそが学校祭だ。来客が笑顔で拍手を送り、感動を表現する。生徒達は地域を変える己の可能性を実感する。「汗をかくことと厭うな、涙を流すことに戸惑うな」とは何かに書いてあった言葉であるが、純粋にそれができる天高生の可能性にまた驚かされ、心を潤わされた2日間だった。



IMG_8910.JPGIMG_8917.JPGIMG_8567.JPGIMG_8845.JPGIMG_8894.JPGIMG_9317.JPGIMG_9435.JPG

オロロン日誌

10月から地方(※)と結ぶフェリーの運航は1日1便となりました。初日は悪天候で欠航でした。そして今季ストーブ初点火。学生時代の先輩から電話があり、厳しい環境だが身体をいたわれと励まされる。島の人には当たり前ですが、厳しい季節がやってきます。

まぐろ漁が本格化しています。生徒が頭をもってきて家庭科の授業で甲焼きにし、調理実習の1品に加えました。何という贅沢でしょう。

※地方(ジカタ):島では、北海道本島をこう呼びます。航海者が沖に対して陸地に近い方をいうと広辞苑にありました。

111003_1550~01.jpg校舎から見えた虹ぎんれい号と園児.JPGぎんれい号と園児IMG_9564.JPGメジマグロのカマ