島めぐり風だよりvol.6 of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

島めぐり風だより Vol.6 (2011.8.30)

『豊かな心と健やかな体』

 8月に入り北海道高等学校地理研究会の一行27名が来島。この会は高等学校の地理に役立つ教育内容及び、指導方法の研究調査や相互協力の推進を目的としている、高校地理教員の研究会である。前日の羽幌町内の巡検に引き続き、快晴の天売へ。遠くは清里や函館から参加した教員もいる。ほとんどが天売に初上陸。
 本校地歴公民科のS教諭が書いた横断幕でフェリーを迎え、熱烈歓迎する。少ない時間ではあるが、観光バスに私も一緒に乗車させてもらい島を廻る。途中本校にも立ち寄り、学校見学をしていただく。歴史と風格ある校舎に入る前に、校門や校舎をカメラにおさめる教員もたくさんいる。フィールドワークで真骨頂を発揮する地理の先生方は多い。
 運転手兼ガイドの島民K氏は、天売島の魅力を歴史・海鳥・植生など中心に余すことなく伝えてくれる。神社を通過するときには、祭りで聞かれる御輿の掛け声(※)を披露。参加者から拍手が起きる。以前海鳥が粗相をし服を汚した観光客が、「運がついた」と離島後宝くじを買い見事当たった話しなどで笑いを誘い、地元民ならではの蘊蓄をたっぷりと聞かせてくれる。再指名するリピーターが多いのもうなずける。

※掛け声:御輿の担ぎ手を励ます、地域に根付いた威勢の良い声。漁師町に残っている独特の節回しで、ヤン衆が漁をする姿を彷彿とさせる。「はごい」ともいうそうだ。

 札幌を開催地とした第62回全国高等学校定時制通信制教育振興会大会・研究協議会北海道大会に参加した。大会テーマは「自然豊かな北の大地から定通教育の新しい方向性と可能性を発信する」。全国津々浦々よりおよそ300名の方が出席し、各都道府県連携のもと、定時制通信制教育の一層の振興を図ることを目的としていた。東日本大震災により、経験したことのない甚大な被害を受けた町の高校も参加していた。開会式で主催者が、健全な将来のためにも先憂後楽をと挨拶をしていた。政教分離とはいうものの、国難ともいえる今だからこその発言と感じた。
 講演は前旭山動物園園長の小菅正夫氏が「伝えたい命の輝き」と題して話された。生きているからこそ輝く命。生き物が、目的を達成するために行動しているとき命は輝く。人間は他の者に利する行為(利他行動)が出来る動物であるとの言葉が印象に残る。天売高校にいる生徒やこれから天売高校に入学する生徒を、輝かすためには何が必要かと自問自答しながら聴く。天売には、一人ひとりの生徒を輝かせ能力を発揮させられる環境がある。天売だからこそできる、定時制の新しい可能性があるのではとも考える。
 帰島後、大学を卒業したものの進路未定者が、2年連続で10万人を上回ったとの新聞記事を読む。豊かな心と健やかな体に必要なものは、いったい何だろうと思う。

 夏休み最終日、漁師の生徒がナマコをごっそり持ってくる。先生方で食べろと気前が良い。肩から腕の日焼けは逞しく黒光りし、顔つきにやりがいのある仕事についている自信や誇りがにじみ出ている。ナマコは主に中国へ輸出される。江戸時代にはフカヒレ・干しアワビとともに中国への主要輸出品であった。本場では乾物として中華料理の材料になるが、日本人には酢の物が定番。ウニのおよそ5倍の値段で買い取られる高級食材なのだ。
 環境省羽幌自然保護官事務所は、8月5日にウミガラス(オロロン鳥)7羽のひなの巣立ちを確認したと発表した。巣立ちは3年ぶりであり、数では1998年の8羽以来最大ということだった。数日寝かせたうまいことこの上ないナマコ酢の歯ごたえを楽しみ、飛来と繁殖が引き続き増えることを期待されるオロロン鳥同様、本校生徒たちを成長させ巣立ちさせるべく、本校の教職員が休み明けも奮闘することは間違いない。

IMG_0263 - コピー.JPG高地研集合写真 ※参加者のプライバシー保護の為修正処理しています。IMG_8213.JPGDSCF2055.JPGIMG_0692.JPGIMG_0702.JPGDSC_0302.JPGDSCF2030.JPG

オロロン日誌

8月下旬。気がつくとウミネコの姿がありません。カモメも渡り鳥とは知らなかった。オオセグロカモメはいますが、冬には本州中部以南に越冬のため飛来するものもいるそう。警戒心が余りない今年産まれた幼鳥が、そこいらでヨチヨチ歩いています。

天売は海鳥の楽園といわれますが、猫も一杯います。猫にも楽園のようです。バードウォッチャーのみならず、猫好きの人も楽しめます。表情豊かな野良猫をカメラに納めるキャットウォッチングはいかが?


オニユリ.JPGオニユリ宝石のようなアオカナブン.JPGアオカナブン野いちご.JPG野いちご