島めぐり風だよりvol.10 of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

島めぐり風だより Vol.10 (2012.1.31)

『ライフライン』

 年が改まり辰歳がスタート。龍のごとく天に向かいぐんぐんと、何事も勢いよく上昇するといいなと新年早々もくろむ。果たして、上昇したのは雪面だった。
 例年にない年末年始の積雪量は、冬の運動不足を解消してくれる。もっとも使う筋肉が日常生活と異なり、湿布のお世話になることもあり偏った運動だ。数年前降雪の少ない道東で勤務の折、雪が降り運動がてら嬉々として腰をひねり遠く高く雪をはね飛ばしたところ、翌日より整骨院通いになり痛い目をみた。あの時は、まさにお灸を据えられ洒落にならなかった。
 始業早々、にわかに積もった校舎屋根の雪を下ろし窓の下を掘り下げるため、教職員全員が生徒登校前にスコップやダンプで排雪し奮闘した。ばんばで走る道産子みたいに鼻息が白く、体から湯気があがる教職員もいた。本校スタッフは何事も使命感で立ち向かう。

 4日続けてフェリーが欠航となった昨年のクリスマス前後、立ち寄った商店では「私が小学校の時には、海が荒れて20日連続で船が来ないこともあったよ」と店主が笑顔でさらりという。新聞や小包はもとより、食料はどうしたのだろうか。
 生きていくのに必要な物資やエネルギーの供給をライフラインという。食料・電気・水道・ガスなどは、気温が下がる冬であれば必需品だ。天売の水はどうなっているかというと、地下30mから24時間汲み上げている。滅菌し高台の貯水タンクに入れ、各戸に供給している。この水が実にうまい。道内ではほとんどの自治体が、川の水を浄水場で浄化しており、地下水を使用している自治体は北海道には天売を含め3カ所しかない。
 昭和49年に年間47日断水したが、同56年以降は断水日はない。現在1日の使用量は年間平均で120t。大雑把にいえば、夏の間天売と羽幌を60分で結ぶ、200人乗りの高速船を少し軽くした質量の水が、天売の人たちの命を繋いでいる。

 夏目漱石は晩年、人生の理想として「則天去私」という言葉を紹介している。小さな私にとらわれることなく、身を天地自然にゆだねて生きていく境地のことである。天売にはどうも則天去私の実践者が多い気がする。高齢化も著しく除雪ひとつとっても自分のことだけではなくお年寄りのことを考え、お互いに助け合っている様子が眼に留まる。ライフラインといえば物質的なものに目が行きがちだが、究極は人間関係であろう。活気ある地域作りには人づくりが求められ、人づくりは教育によるところが大きい。こちらの理想を訴えるばかりでなく、生徒や地域の方はどうしたいのか。それを踏まえながら、みんなで理想的な天売高校のかたちづくりをしていきたいと年頭に考えている。

IMG_0428.JPG雪下ろし前の玄関校舎雪下ろし排雪.JPG校舎の雪下ろしヘリもライフライン.JPGヘリもライフライン鳥居も雪の中.JPG雪に埋まる鳥居

※写真は一部加工を施しています。

オロロン日誌

町内の新年会は、賑やかに盛り上がりました。なかでも「宝引き(ほうびき)」に子どもたちは大喜びでした。ひもを手繰り当たりを競う、伝統ある新年の福引きです。

童謡「雪」で猫はコタツで丸くなると歌われています。てっきり寒さには弱いと思っていました。天売の野良猫は、雪の上をのそのそと歩き逞しく驚きです。

IMG_0434.JPG校舎つららIMG_0433.JPG屋根の雪IMG_1093.JPG天売の猫