島めぐり風だよりvol.14 of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

島めぐり風だより Vol.14 (2012.5.31)

『たくわえる』

 聞かれて返答に困る質問がある。自分の優柔不断さに嫌気がさすこともあるが答えづらいものだ。好きな季節というのもその類だ。冬は寒いが、新雪に朝日が差したときの美しさやスキーやスノーボードが出来る楽しさがある。秋は紅葉がきれいなものの、晩秋は物寂しいな等、つい余計なことを考えてしまう。
 しかし、天売に来てようやく自分の答えが出た、春が四季の中で一番だと思う。50数年の人生の中で、これほど自然と向き合い、野の花や鳥を観察した経験はない。天売での生活そのものが、花鳥風月と密接につながっているのだ。とりわけ春は、厳しい冬を過ごした分だけ自然が蓄えた力を放出する。新緑がまぶしく、植物が目まぐるしく成長し花を咲かせるのに高揚し、私は愛車のママチャリ号で暇をみつけては島を廻っている。
 会議の席での学校紹介も少しばかり返答に困るが、先日定時制通信制体育連盟(=定体連)の地区大会が終わったので、こんなことがいえるようになった。「全校生徒が全員で全道大会に出場することになりました」と。定時制の生徒が一同に集い全国大会につながる定体連主催大会は年に1度である。仕事を持っている生徒にとって、授業が終わった後の部活動は楽しみだが疲れるものとなっている。朝の早い仕事に就いている者は睡眠不足でミスを上司から注意されることも多くなり、部活動を辞めざるをえないこともある。どこの学校も部員を揃えるだけで大変だ。また他校との練習試合もほとんどできない実態がそこにある。そんな中、本校の生徒は、全員が仕事を持ちながらもプラス思考で積極的に学校生活を過ごし、新入生は5月病にもならず地区大会に臨んだ。その結果、全校生徒が皆全道大会出場という素晴らしい成果を残した。
 最近、生徒会長の口癖は「眠たい」だ。1日5回も食事をする猛者も、授業後の部活動で連日の寝不足に閉口している。赤ガレイやイカ漁に続き、いよいよたこ漁が本格化する。彼は、船舶免許を持ち伯父の船に同乗し漁をしている。二十歳くらいには自分の船を持ちたいという夢をもつ彼は欲張りだ。定体連全道大会でもひとつでも多く試合をし、昨年より勝ち残りたいと思っている。環境は異なっても、同じ定時制で学ぶ仲間たちとガチンコ勝負ができることを純粋に楽しんでいるのだろう。苦節に絶え、若さで常に何かに挑む彼の姿勢は、後輩たちにも良い影響を与えてくれる。
 人間の眼玉は、風景をたくわえる事が出来るという話が太宰治の小説にあった。たしか降り積もる雪にうかれてお土産を落としてしまった娘が、美しい雪景色を見た眼(まなこ)を帰宅後義姉に見せるという短編だった。生徒も経験したことや風景を全てたくわえることができはしないが、みずみずしい感性豊かな年代だからこそ喜怒哀楽ひきこもごもの体験をさせてあげたい。何を追い求めるのかは個々人により違うが、生徒たちが大人になったときに、どんなことが記憶に残っているのかを想像するのは楽しい。

タチツボノスミレ.JPGタチツボノスミレ美しい新緑の曲線.JPG美しい新緑の曲線IMG_4106.JPG全員が全道大会出場生徒自慢の船.JPG生徒の働く漁船生徒の操縦で出漁.JPG出漁

※写真は一部加工を施しています。

オロロン日誌

この時期笹の子、ウド、ワラビなど山菜が豊富に採れます。保管方法も様々です。塩で漬ける、干して乾燥させるなど島のお年寄りは知恵があります。エゾニュウという山菜は、正月の鯨汁に欠かせないもので、塩した後に真水につけ、さらに糠と塩で1年寝かせるそうです。

ハクサンチドリやノビネチドリはラン科の植物。マニアには垂涎の花だと本州から来た方がいっていました。クロユリは暗紫褐色で可憐な百合。今年ようやく自生している場所を発見出来ました。

仕込み直前のエゾニュウ.JPG仕込み直前のエゾニュウハクサンチドリとマイヅルソウ.JPGハクサンチドリとマイヅルソウ可憐なクロユリ.JPG可憐なクロユリアキタブキのめばな.JPGアキタブキのめばなニリンソウ.JPGニリンソウヤチブキ.JPGヤチブキ