2010年12月の日記 of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

2010.12「格好良く、そして誇り高く」

 本校は、漁業後継者の育成が島民から強く望まれる中で、昭和29年に開校し、今年で57年目を迎えている。現在、全校生徒は6名で、漁を行いながら通学している生徒は1名。この生徒R君は、3歳の時に初めて漁船に乗り、漁に連れて行ってもらったとの事。すでに、小学生の頃には漁の手伝いをしており、「立派な漁師になる」ことが夢であったそうである。中学校を卒業すると、早速、船舶免許や漁業権を取得し、今年の春からさっそうと海に出ている。表題の「格好良く、そして誇り高く」は生活体験発表大会の校内選考でR君が発表したときのテーマである。その中で、毎日危険な海へ出て行く漁師の責任感や精神力の強さ、そして、黒く焼けた太くパワフルな腕に憧れを抱くR君の姿が生き生きと描かれていた。反面、朝早く、まだ慣れぬ仕事に疲れた身体を引きずりながら、夜間定時制に通うつらさも吐露している。「学校面白くない」とか「学校やめるかな」とかいいながら、誰よりも先に登校し職員室に来るR君を見ていると、本当に頭が下がる。漁に出て9ヶ月がたち、みるみる漁師の風格が備わってきている。校舎内では今でも、袖抜きのTシャツ1枚。夏の間、真っ黒に焼けた腕は、いまだに褐色を帯びてたくましい。そして、漁師っぽい言葉遣い、つまり、先生たちに向かってのため口。でも、根が優しいだけに、板に付いていないのが愛らしい。特に、漁のことを話すと、目を輝かせながら、丁寧に説明してくれる。ある日のこと、下校の見送りの際(本校では、毎日、生徒の下校を先生方全員で見送ることにしている)に、R君の手にプラモデルの箱が。今どきの高校生がプラモデル?私の小学生時代、プラモデル作りが大流行で、戦艦とか戦闘機などを良く作ったものだ。何のプラモデルかを聞くと、「インターネットでマグロ釣りの漁船をゲットした」と得意げに話すR君。なるほどなあ~。仕事が楽しくて仕方がないという素振りを見ていると、定年を目の前にする私は果たしてどうだったのか、と自問自答してしまう。R君だけではなく、仕事を終えて眠い目をこすりながら、勉学に励む全ての生徒に感動しながら、日々を過ごさせていただいた私は幸せ者である。
先日、R君が登校してくるやいなや、「先生、カジカ汁作れ」。手に持つビニール袋には大きなカジカと大根が。早速、本校の名シェフS先生の登場。空き時間、調理室で悪戦苦闘しながらカジカをさばき、おいしいおいしいカジカ汁が完成。職員室の中央に鎮座する石油ストーブに大きな鍋があがり、みんなで舌鼓を打つ。新鮮なので、身がぷりぷりで、思わず、「うんめ~!」これも、天売高校ならではの光景であろう。それにしても、大根まで持ってくるとは、何と心優しいR君ではないか。「格調高く、そして誇り高い、若き漁師に栄光あれ!」さて、次は何を持ってくるかな?おっと、いけない、いけない・・。

IMG_6281.JPG43582.jpg漁船プラモデル㈱青島文化教材社IMG_6254.JPGIMG_6248.JPGクリックすると拡大します。