2010年6月の日記 of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

2010.6「みんなまとめて、見学旅行」

 先日、教員生活最後の見学旅行に引率してきた。本校では、生徒数が少ないため普通の高校であれば1年生で行う宿泊研修と2年生で行う見学旅行を複数学年合同で隔年実施している。これまでのローテーションであれば、今年は2・3年生による見学旅行になるのであるが、来年度入学生の見込みが立たないため、全学年による見学旅行となった。
行き先は奈良、京都、東京を見学して回る道内高校の伝統的なコース。最近では見学旅行も多様化し、海外に行ったり体験的な学習を取り入れる学校が増えてきているようであるが、北海道には日本の古い文化の蓄積が少なく、また、先進的な中心地帯から遠く離れた地域に住んでいるという観点から、結局、日本の古い文化と最新の文化を同時に学ぶ旅程を組むこととなった。特に、東京ディズニーランドは生徒にとって不可欠の存在となっている。
本校は離島の高校ゆえ、他の高校よりも一泊多い5泊6日の行程となる。初日はフェリー、バス、飛行機、モノレール、電車に乗り継いで半日かけて目的地京都へたどり着く。「これで、自転車に乗ればほとんどの乗り物を制覇できる」と独り言。二日目はジャンボタクシーに乗り込み、奈良の東大寺に法隆寺と京都の金閣に清水寺、いわゆる世界遺産巡り。東大寺では鹿に出迎えられ、生徒は大喜び。早速、ひと束150円の高級せんべいを買わされ、鹿と戯れる。お辞儀をする鹿に「かわいい」とせんべいを与える生徒。気がつけば、他の鹿に囲まれ、身体をつつかれたり服をかまれたりでエサの催促。鹿の評価は「かわいい」から「図々しい」へ。島では海鳥や野ネコには絶対エサを与えてはいけない、と教えられている。私も炊事遠足で残飯をカモメに与えて生徒に叱責されたことがある。動物の餌付けはやはり考えもの。大仏殿に入り、盧舎那仏と久々のご対面。以前は堂内の写真撮影は御法度と記憶しているが、自由にフラッシュがたかれている。仏教の世界にも規制緩和の波が押し寄せてきたのか。大仏の鼻の穴と同じ大きさの柱の穴に入ってみたが、通り抜けられずメタボを実感。その様子を見ていた外国人観光客から拍手され、心の中でガッツポーズ。それにしても、この時期の観光客は外国人が目立つ。高校の見学旅行のほとんどは9月、10月に行われるので、この時期を外してツアーを組むそうだ。本校も10月からフェリーが一日一便となり、海が荒れて欠航の日が多くなるため、一番波の穏やかなこの時期に見学旅行を実施している。法隆寺で食事をとり京都へ向かう。きらびやかな金閣を見て清水寺へ到着した頃は、すでに夕刻となっていた。今回引率の先生は私以外が2名で独身。清水と言えば縁結びの神様、「地主神社」。早速お参りに行ったようであるが、すでに終了しておりお守りは購入できず。やっぱり二人には縁がないか…。三日目の朝、信じられないことが起こった。年をとり、朝は目覚まし時計が無くとも、5時頃に目を覚ます。朝には絶対の自信を持っていた。でも一応、念のためホテルの目覚ましをかけて眠りについた。ドアをたたく音。「時間ですよ!」の声。慌てて時計を見ると、朝食時間を20分も過ぎていた。昨日の強行軍が老体にこたえたのか、サッカーワールドカップを見て就寝時間が遅くなったせいか、それにしても目覚まし時計がならなかった・・・のでは?恐らくルームライトを消すため、ベッド脇のボタンを押したときにアラームをリセットしたのではないか?とにかく、急いでレストランに行かなければとエレベーターを待っていると、男子生徒がやって来て「校長先生、すいません」、「えっ?」「僕たちを待っててくれたんですよね」「実は、私も寝坊して…」「校長先生も遅刻?これで一安心」との会話が続く。この日は全日、自主研修。大阪に食い倒れに行く者、舞妓経験に行く者、自転車で名所巡りをする者、元気にホテルを出発。携帯電話がこの世に登場するまで、自主研修の日と言えば、ホテルに本部を置き、生徒からの定時連絡、緊急連絡を受けるために引率団長が待機していたものだ。今は携帯電話で、いつでも、どこでも、だれとでも連絡が取れる。二人の先生と連絡時間を確認して私も京都市内を巡り歩いた。こんな事が出来るのは、天売高校だからか?四日目は新幹線で東京ディズニーランドへ移動。ここで待っていてくれたのが、5月に島で交流した都立杉並工業高校6名の生徒。(校長の独り言5月を参照)学校のご配慮により、島で約束した再会が実現した。ここでは交流を深めることが第一。「行動は生徒同士に任せよう」と言うことで、私はM教諭とアトラクション巡り。正午に入園し、午後9時までの行動。平日のため、待ち時間は長くても70分、15分待ちのものもあり、何と7つのアトラクションを制覇。途中、雨が降り心配されたパレード・花火も行われ、初めて見る美しさに感動し、思わず娘に写メを送る。たっぷり遊んだ喜びに浸りながら(だれが?)、ランドを後にしてホテルに着いたのが午後10時過ぎ。小集団でなければ出来ないこの計画。ここでも待ち人あり。今春、卒業し東京の大学に進学したT君が訪問してくれていた。短い時間ではあったが、わざわざ会いに来てくれた天高生の絆、元気に大学生活を送っていることを確認できた貴重なひと時であった。五日目は午後2時半まで東京の自主研修。見学や買い物で時間を費やし、羽田空港から札幌へと向かう。札幌のホテルでも待ち人あり。昨春、市内の短大に進学したMさんが訪問。ホント、天高生の仲の良さには脱帽するばかり。最終日、都市間バス「はぼろ号」に乗り、さらに、高速船「サンライナー」に乗って無事天売島へ帰還した。「笑顔で旅立ち、笑顔で帰ろう」を合い言葉に過ごした5泊6日の見学旅行。事故無く、たくさんの楽しい思い出づくりができたことは、引率した二人の先生の細かい指導、生徒諸君の秩序ある行動、そして、それを支えてくれた保護者、業者の皆様のおかげと感謝する。「みんなまとめて、見学旅行」、私の思い出の一ページを飾るのは間違いない。

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