2010年1月の日記 of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

2010.1「天売島進化論」

 「ネコはこたつで丸くなる」、おなじみの「雪やこんこ」の一節にあるように、ネコは寒さに弱い動物の代表である・・・と思っていた。天売に来るまでは。 
天売の売り物といえば、なんと言っても島で繁殖する8種類の海鳥。季節になれば100万羽が生息するとも言われている。しかし、ウミガラス(オロロン鳥)は絶滅の危機。その他の海鳥も減少傾向にある。その原因は、エサや水温・気候などの海洋環境の変化、ネコ・カラス・オオセグロカモメと言った捕食者の存在などが複合的に絡み合っているものと考えられている。島には周回の観光道路があり、土日や出勤前の時間(夜間定時制のため)を使って散策するのが私の趣味である。時期になり、繁殖地にさしかかると雛や成鳥の死骸が散らばっている光景が目に入ってくる。周りに目を向けると、笹藪にネコがうずくまっていることがしばしば。島には海鳥保護対策委員会があり、一応、私も役員の一人。その総会で、「島内の野ネコを駆除する対策」が議題にあがったが、動物愛護の観点から簡単には町の許可が下りないとのこと。確かに、島内の野ネコの多さには目を見張るものがある。かなりの海鳥がネコの犠牲になっているものと思われる。9月になると多くの海鳥は別な場所に飛び立ち、観光客も少なくなり、島は一挙に寂しくなる。そして、厳しい冬を迎えることになる。ところで、野ネコは冬をどう過ごしているのであろうか。十分なエサもないのに。ところが、なんとなんと、まるまると太ったネコが堂々と雪道を闊歩している姿に、思わず見入ってしまう。寒さに弱いはずのネコが、島の厳しい環境の中で進化したのであろうか。とにかく、そのたくましさに畏敬の念すら感じている。その姿に魅せられたのか、本校の先生がネコを飼い始め、2匹が野宿から御殿住まいの優雅な暮らしをゲットした。
 現在、生徒に「生きる力」を育むことが学習指導要領の柱の一つになっているが、この力を育てるには恵まれた環境の中ではなかなか難しいかもしれない。天売の子供たちは自然環境だけでなく、学習環境、生活環境等が都市部に比べると、遙かに厳しい状況の中で生きている。本当に、よく学び、よく遊び、よく働く。子供たちはこの環境の中で、みんなで協力し、支え合って、たくましく成長・進化を遂げていくのであろう。天売島のネコのように。

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