やっぱりカモメでしょう —天売の高台で思うこと- of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

第8話 やっぱりカモメでしょう —天売の高台で思うこと-

 今回の主人公はカモメです。「カモメ!?そんな普通の鳥…」とお思いになるかもしれません。しかし、天売のカモメは他と違うのです。といってもオオセグロカモメとウミネコが殆どであり、種類で珍しいのではありません。カモメの目線の位置が他と違うのです。天売は一番高いところで海抜200メートル弱ですが高台の場所が多く、国道や住宅地は大体海抜10〜20メートル位の所にあります。従ってふと海を見渡すと目の前にカモメが飛んでいて、こちらをジロッと見ているなんてシーンにお目にかかる機会が結構あるんです。そう、人の目線とカモメの目線が同じ高さになる名所が実に多いのです!カモメの飛び方はゆったりしていて、とても優雅で知らず知らずにのうちに癒されます。

 東日本大震災からもう少しで1年が経とうとしていますが、各校災害時の避難手段について再確認されたことと思います。天売も羽幌町の避難訓練の取り組みと連動し避難経路や設備を再考する1年でした。天売の生活圏は大部分が高台にあり、余程の津波でなければ避難経路の条件としては平野部より有利な地域です。しかし、逆にこの高台がなかったら…と思うと、有効な手段を見つける困難さを感じます。場所的に不利な地域はハード面を整えることが急務であり、また日頃より教職員が危機管理意識を持ち、生徒の自主判断力を育てることも必須です。被災地の学校は当初、学校再開の目処が全く立たない状況で多くが避難所となり、生徒も教員も銘々が大変な状況にもかかわらず地域に貢献していました。普段地域からお世話になっている学校ですが、学校と地域のあり方についても考えさせられました。
 被災地の学校は数多くの貴重な教訓を残してくれました。そして今なおそれを我々に発信し続けてくれています。それらを無駄にしないよう引き継がなくてはなりません。発信源の皆様に、心より感謝いたします。

<写真1・2> 港近くの避難階段
 昨年は合間を見て島内各地の避難施設を見て回りました。天売の住宅地で唯一海抜が低いのはフェリーが着く港の周辺です。なのでそこには津波が来た時、すぐ高いところに移動できるように断崖一面に避難階段があります。実はその階段を上がった避難場所は焼尻をバックに港が全望でき、とっても景色の良い場所でありました。そしてその付近は、海鳥の通過経路にもなっていたのです。
1.jpg避難階段2.JPG避難階段(冬)



<映像1> カモメ観測名所1(天売港避難階段上(燈台下))(240fps)
 その避難階段の上部から見たカモメの映像です。今回のテーマの「カモメ」と聞いて、ついにネタ切れかとお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、実は私は今まで撮った鳥の映像の中で、一番この映像を気に入っています。カモメとバックの景色がマッチして、スカイハイの音楽がとても良く合います。


<映像2> カモメ観測名所2(黒崎海岸)(240fps)
 旧海水浴場である黒崎海岸も国道から見晴らしが良く、カモメが丁度目線に来る高台になります。時々マムシが出るということで現在は海水浴場ではありませんが、景色抜群で海岸では一番気に入っている綺麗な所です。春先オロロン鳥も時々寄ることがあるらしいです。「マムシ注意」の看板がドキッとしますが出ても性格は大人しいので、こちらが何もしないで攻撃してくることはありませんので、あまり怖がらないように。でも草の間を無造作にこいで歩いたりしないで下さいね。


<映像3> 繁殖名所3地点(赤岩、千鳥ヶ浦、千鳥ヶ浦と観音岬間)(通常撮影)
 次はカモメの繁殖地の名所3連続映像です。1つ目「赤岩展望台」ウミネコのみならず、ウトウ、ケイマフリの営巣が見られます。2つ目「千鳥ヶ浦展望台」ここは主にオオセグロカモメの繁殖場所で展望台から遠いですが、設置してある望遠鏡で詳しく観測できます。カモメの数は最近少ないですが、利尻も見えてたまに礼文も見えて天売の地層が見えて景色が最高に綺麗な場所です。3つ目はここ2年くらい前にできた繁殖地です。3年前はそれ程でもなかったですが、今はカモメの数では一番かも。ここは殆どウミネコと思われます。


<映像4> かつての繁殖名所(観音岬)(240fps)
 3年前に赴任した時はここが一番の繁殖場所だったのですが・・。景色はいいのですが今は殆どカモメがいません。映像は昨年のものですがこれでもカモメがいる方で、現在は全くいません。カモメの繁殖場所は結構変わるんですね。カモメは下から吹き上がる風をうまく利用して飛んでいる様子がよく分かります。地形に沿って吹き上げる風に乗り、地形に沿って飛んでいる感じですね。グライダー状態でなるべく楽に飛べる場所が、繁殖場所に変わるのでしょうか?


<映像5> 道道沿いでの行動(240fps)
 羽ばたいたウミネコがグルッと焼尻バックの素晴らしい景色の中を飛んだ後、再び同じ場所に着地します。何をしているのでしょうか?たぶん雛が近くにいてそれを守るために、最初私に向かって威嚇してきたものと思われます。道道沿い(西側の人家のなくなる道路)では時々このような光景があります。たまに親鳥の近くにちらっと雛が姿を出していることがありますが、すぐ草むらに隠れてしまいます。おそらく、海側の絶壁の繁殖場所から迷って出てきた雛が、帰れず親が見張っているのでしょうね。しかしこのようなケースでは、大体数日後雛の羽が無残にちらかっているのを目にします。多分猫に襲われたのでしょうね。とても無念な気持ちになります。


<映像6> カモメの雛(120fps)
 西海岸で2種類のカモメの雛がたまたま一緒に泳いでいるところを撮りました。最初の右側がウミネコの雛、左側がオオセグロカモメの雛です。オオセグロカモメの雛の方は、よく地面を歩きながら民家の近くでも出現します。人慣れしているのはオオセグロカモメですね。ウミネコは繁殖期以外は島を去りますが、オオセグロカモメは年中島にいるので、海鳥とは言えないのかも。


<映像7> ウミネコの教育(通常撮影)
 親鳥の掛け声と共に雛が巣穴から出てきて辺りを、キョロキョロ見回しています。親に「さあ勇気を出して外に出てきなさい」と言われて、はじめて外の景色を見たのでしょうか?雛はなんとなく怯えているように見えます。
 次はウミネコの雛が岩壁に向かって、繰り返し繰り返し飛ぶ練習をしているのでしょうか?やはり親鳥がじっと見守っています。
 こんな人里離れた岩場にも教育の息吹を感じます。

<写真3> 高速船で…カモメの智恵
 天売から高速船で羽幌に向かう途中、天売を出て間もなく撮った写真です。このカモメは天売の港から乗り込んできたのですが、どこまで船に乗っているつもりなのか気になっていました。なんと焼尻港に船が着いた途端、パッと飛び立ちました。慣れてるんですかねえ。「高速船は速いから…」なんて、常日頃船を利用してるんでしょうか?賢い!
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