ウトウってどういう鳥ですか? of 北海道天売高等学校

北海道天売高等学校 定時制普通科

第1話 ウトウってどういう鳥ですか? What’s the Utoh ?

 天売で有名な鳥はオロロン鳥。しかし、現在は年に数十羽来る程度で、ここ十数年は雛が生まれても無事育ったという報告はありません。また、数十羽来ると言っても、普通の人が観測できるような場所には来ません。私自身本物は見たことがありません。話によるとある時期、海に泳いでいるところをフェリーから観測できたり、黒崎海岸にひょいと立ち寄っているところを見ることもあるらしいのですが。

 それに比べてウトウという鳥は毎日、海と天売島を行ったり来たり。その数、数十万羽と言われており、天売は世界的な繁殖地になっています。5〜7月の間天売島にいれば、赤岩展望台付近で毎日簡単に見ることができます。時間は夕方暗くなる7〜8時頃(本当はそれ以降の夜中もいるはずですが、鳥保護のため皆深夜は観測を控えます)。雛に与えるエサのいわしやイカナゴ等を口にくわえて、敢然と陸にある巣に戻ってきます。しかし、巣の近くにはそのエサを横取りしようとするカモメや、ウトウそのものを狙っている野良猫が待ち構えています。

 颯爽と舞い戻り、敵を回避して巣に帰還するウトウの様子は実に見事で、鳥嫌いでない限り感動を与えてくれます。

 「Catch the nice shot ! 〜 天売に来る鳥たち」の第1話は今や、天売島で一番の人気者といってもいい、ウトウの映像を紹介します。

<映像1> ウミウも思わずビックリして水路を空けるウトウの大群(通常撮影)


 ウトウは天売にいる時期、毎日一斉に陸に戻るわけですから、その直前は海上でも大群で移動しているはず。その通りなんです。ウトウは夕方暗くなる数時間手前くらいに、海上で群れをなして天売島に戻ってきます。赤岩での観測が有名なので、海上の移動については数年天売にいても意外に知らない人も多いのですが、暗くなるちょっと前に黒崎海岸や前浜から海を見渡すと、この移動を見ることができます。沿岸からはちょっと遠いですが、肉眼でもなんとか見ることが可能です。

<映像2> なんかバタバタ音がする〜着地前の飛んでいる様子1(通常撮影)


 ふわふわ飛んでいるのがカモメ。パタパタ素早く音を立てて飛んでいるのがウトウです。カモメのゆったりした飛び方に比べ、ウトウのせわしない飛び方は鳥というよりは蝉のような昆虫が飛んでいるイメージです。

<映像3> Birds' War〜着地前の飛んでいる様子2(120fps)


 同様に着地前の飛んでいる様子のハイスピード映像です。通常撮影では着地のシーン以外、動きがせわしなく何が起きているかわからない雰囲気があるのですが、ハイスピードで映したスローの映像をあらためて見ると、昔見たハリウッド映画のインディペンデンスデイの、空飛ぶ円盤(カモメ)の間を地球の戦闘機(ウトウ)が合間をくぐって戦っているようなイメージを連想してしまいました(あるいはガミラス戦闘機と宇宙戦艦ヤマトのコスモタイガー)。考えすぎにしても、そこは鳥たちの戦争が繰り広げられている場であることは間違ありません。途中ウトウが前にカモメがいてブレーキをかけ方向転換する、またカモメにエサを盗られているシーンもあります。いずれも空中での出来事です。探してみて下さい。

<映像4> Birds' War〜着地前の飛んでいる様子3(240fps)


 同様に着地前の飛んでいる様子のハイスピード映像です。さらに倍スローになっています。沢山のカモメを回避しているんだなあという様子がよくわかります。

<映像5> トトロに羽が生えている?〜着地シーン(120fps)


 赤岩公園でウトウを初めて見たとき、お腹をいっぱいに拡げてバタバタと音を立てて着地する様子が、トトロに羽が生えているようなイメージでした。なんとももたもたしていて見た目もかっこ悪く、鳥としては異質の飛ぶのが下手な鳥の印象がありました。しかし、よく考えるとウトウはカモメに負けない速度で飛行してきて、かつ着地してから他の鳥にエサを奪われないよう、できるだけ自分の巣の近くで着地しようとするのだから、全力で飛んできてピンポイントで止まるみたいな飛び方を強いられているわけです。開脚しお腹と羽をいっぱいに拡げているのは空気抵抗を大きく受けるため、そしてバタバタしながら逆噴射しながら急激に減速している。ハイスピード映像を見るとそんな理にかなった着地をしている様子がよくわかります。そう考えると、実はウトウは空母から離着陸する戦闘機のような飛行技術に大変優れた鳥と言えるのではないでしょうか?

<映像6> 当然地上でも戦い〜頑張れウトウ! (通常撮影)


 エサをくわえ着地したウトウは、一刻も早く巣に戻らなくてはなりません。巣にはかわいい雛たちがお腹をすかせて、ウトウのお父さんお母さんが持ち帰ってくれるエサを待っています。しかし、カモメはエサを持ったウトウが地面に降りて早々、それを横取りしようと追いかけます。そして、運の悪いときはカモメ達にエサを奪われてしまいます。また、エサを持ったウトウの敵はカモメだけでなく、エサを持って帰らなかったウトウ達にも狙われます。敵が多いのでウトウが無事エサを巣に持って帰るのは、結構大変なことなんです。

 しかし、エサを奪われたウトウは意外にあっけらかんとしています。人間のように奪った者に対して、怒って訴えるというようなことはしません。しょうがないと思うのか、自然の生き物は自然の中の勝敗は、意外とすんなり受け入れてしまうようで、あきらめが早いのです。カモメにとっては大変な恵みでしょうねえ。でもウトウの赤ちゃん大丈夫なんだろうか?と心配になりますが、3日位ならエサが無くてちゃんと生きていけるようです。強いですねえ。

 ウトウにつてはもう一度特集します。ウトウの朝出発する様子、エサをとっている様子、雛の様子など、地元ならではの映像を紹介する予定ですのでお楽しみに(7月後半)。